あ、私恋してるんだなぁって気付いたのは、ほんの最近の話。

 その気持ちに気付いたのが何だかとても自然だったので、私はきっと此れ以上ない自然な恋をしてしまったんだ。

 どきどきがずっと続いたハツコイの時とはちょっと違う自然なすきという気持ち。

 けれど余りにも思いが自然過ぎて、……自然すぎたから。

 きっとあの人は私の恋心には気付いていないんだろうなあと思う。

 それがなんだか悔しくて。

 なんだかとってももどかしい。

 何で私の恋心に気付かないのよ。

 ああ、でも。ちょっと待って?

 恋っていったい何なんだろう? この“すき”って気持ちは、ほんとに恋なのかな?

 自分の気持ちまでもがワケがわからなくなってしまって、私はとうとう朔に泣き付いた。


「これって、恋なんだと思う?」

 多分に他人に聞くことは大きく間違っていることだとは思う。

 現にほら、急に問われた朔だって少しばかり困った顔をして首を捻っている。

「“恋”というものの定義が良く解らないのだけれど。望美は今、どのような気持ちを感じて居るの?」

 私の抽象的な質問にも、朔は考え、答えようとしてくれる。

 どんな気持ち? 聞かれると直ぐには言葉に出来なくて、ついつい私は口篭ってしまう。

「……んん、上手く言えないんだけど。一緒に居られると、何だか自然に笑ってられるようなそんな感じ。……あ。勿論朔と一緒に居てもそう感じるんだよ? 安心できる。……でも。何だか、少し違うような、そんな気がする」

 感じてる気持ちは一緒の筈なのに、何処か違う。其れは本当に些細な違いで、だからより私は自分のこの感情が恋なのか如何か解らないのかもしれない。

「今まで私、恋をしたことがなかったわけじゃないんだよ。恋をしたことがないから、この気持ちが恋なのか如何か解らないとかそんなことじゃないんだ」

 ならば何故解らないのか。

 其れは今までの恋とはまるで形が違うから。

 こんなの全然知らない想い。こころがなんだかむずむずしてくる。

「そう……。私が明言することではないと思うから、敢えて此れは私の一意見、なのだけれど」

 押し付けるものではなくて、参考までにと付け加えるように言葉が重ねられる。

 こういうところの気遣いが朔は本当に細かいと思うのだ。

「きっと其れは、恋なんじゃないかしら。多分、だけれど。……恋は相手によって形を変えるものなんだと私は思うわ。どんな形があっても良いと……そう、思うのよ」

 緩やかに紡がれた彼女の言葉は、何となしに私の胸にすんなりと入って来て「ああ、そうかもしれない」と妙に納得させられた。

「……そうなのかも。ありがと、朔」

 この想いは変なものではなく、恋なんだと納得させてくれて。

 相手の形に合わせるように、私の恋心も少しずつ違うのだろう。

 そうそれはまるで、型に流し込んだチョコレートのように。

 あなたの型に流し込むように、私の恋は変形するのだろう。



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